眼下の流れを見ても、川の事、分かりません。だから視線を上げ、空も一緒に眺めると…ほらね!  この風景写真、静岡県・大井川で撮影しました。|矢嶋ストーリー作品『I thinkでいこう』より。文と写真は矢嶋剛。

§09 流れを見渡せ!

「たくさん書く」(§05)、OK!
「表現を豊かに」(§08)、OK!

すると、
「伝える」工夫に気が回るように。
この境地は、書き手の意図が判る!
に通じています。

別の言い方をするなら、
著者の狙い、バレバレ。

すると、難しい本もスラスラに。

そんな秘訣を、これからの数§で
解説していきます。

初めに、書く「流れ」について。

起承転結 という流れ

まず、書く「流れ」の例として、
有名な「起承転結」の話をします。
「起承転結」は、以下の「流れ」で
作られた文章の書き方です。

★起
「こんな話が始まるよ~」と
 小さく予告(ウンウンとなり)
★承
「話の枠を広げてみるね!」と
 テーマを宣し(盛り上がり!)
★転
「別の角度から眺め」て虚を突き
 (そうなんだ~と思わせ)
★結
「話のツボ、わかった~」で
 スッキリ(納得感アップ!)

を読み手の心に起こすように
作られています。作意 あり。

★転 でドキッとした読者の心を
★結 で落ち着かせて…
な仕掛けが隠れています。

この壁ドン系の「流れ」を作って、
「なるほどねぇ~」「賢いねぇ~」
と思わせる。そんな効果を
「起承転結」は狙っているのです。

そうなのです。

・文の「流れ」に作意があった
・作意には期待する効果があった


ということは…

・その効果のために何かを捨てた?
・捨てた効果=弱点かも?


その通り!
「起承転結」には弱点があります。

起承転結の弱点

実は「起承転結」、
長々と書いて最後に結論へ辿り着く
「流れ」なので「何を言いたいの!
早く言って」には不向きなのです。

たとえば、
「海外旅行に行くと不思議と蕎麦が
 食べたくなります。」を置いて、
「流れ」を始めたとします。

しかし、それは結論じゃないので
読み手は肝心な箇所が出てくるまで
待つしかなく、その間に

急いでいるときは腹が立ちます。
(大阪のおばちゃんだったら)
「で、なんやねん」
「はよ、言い」
「話、長いわぁ~」
「あんた、校長先生?」

になってしまいます。

この特質を書く側は知っています。
ですから「まず結論を先に!」を
重んじる新聞記事では厳禁

新聞記事って、ふだん意識しないと
思いますけど、その「流れ」は

まず見出し 例 ◯◯逮捕
 (一目で結論の要点)

最初の文で 結論。
 例 ◯日◯時、◯◯容疑で◯◯を
   警視庁が逮捕…


必要ならば 続いて補足。
 例 被害にあった◯さんは…

になっています。

「起承転結」って
万能じゃないんです。

優れた作文は「起承転結」で、
お手本は朝日新聞の天声人語!
な人がいるけど、あれ、呪縛。

映画や落語にも

書く「流れ」はあります。
観客に◯◯と思わせたくて
監督や噺家が台本を書くから
当然といえば当然。

せっかくなので、その「流れ」も
眺めてみましょう。

黒澤明監督の映画、『七人の侍』は
状況設定(農民ピンチ!)→
成り行き(侍&農民vs.野武士)→
決着(侍&農民の勝利)→
解釈(真の勝者は農民)→
エンディング な「流れ」で
紡がれていきます。

ラストシーンまでドキドキしながら
夢中になって、最後の最後の最後に
「そういう事なのね」を確認。
観客たちは「うんうん」と納得して
映画館を出ていきます。

同じ映画でもアメリカン・ニュー・
シネマと呼ばれた作品は違います。
たとえば『真夜中のカゥボーイ』は

状況設定(主人公、NewYork へ)→
成り行き(彼女と出会い)→
成り行き(彼と出会い)→
成り行き(いろいろあって)→
エンディング  な「流れ」。

『七人の侍』のような決着や解釈は
無し。「え~、終わり?」のまま、
観客は映画館を出ます。この余韻を
狙った「流れ」なんです。
(end credit で流れる Toots Thiel-
 emans さんのハーモニカが象徴的)


噺家・立川志の輔さんの創作落語は
「流れ」的に『七人の侍』に近い。
代表作「みどりの窓口」は…

状況設定(困った客A)→
状況設定(困った客B)→
状況設定(困った客C)
解釈(落ち) な「流れ」。

理屈(なぜ可笑しい)を観客に
理解させて幕を下ろします。

文章や作品に隠れている「流れ」、
それは作り手の意図の表れです。

「流れ」が読めると

もうお分かりだと思います。

書く「流れ」が見える。それは、
書き手の意図が読める!
ということなのです。

ですから、
「流れ」が読めると、
読書もスムーズ。

この本の「流れ」は、◯◯みたい。
だとしたら、この先は…。
ほら、やっぱりそうだった。
おまえの展開なんて、お見通しだ!

になっちゃうのです。

本の目次を見て、書いてある内容を
当てる人、このテクを使ってます。

みなさんも、ぜひ。

   
眼下の流れを見ても、川の事、分かりません。だから視線を上げ、空も一緒に眺めると…ほらね!  この風景写真、静岡県・大井川で撮影しました。矢嶋ストーリーの応援サイト『I thinkでいこう』より。写真、矢嶋剛。
物事は全体を見ないと。この感覚、
川の風景に通じます。眼下を見ても
川は見えず。でも顔を上げれば…。
(静岡県・大井川の流れ。川幅、広々) 

「流れ」を読んで
読書力 アップ