どちらもスゴイ本です。『国富論』を読めばアダム・スミスさん(左の方)が、『アンクル・トムの小屋』(右の本)を読めばハリエット・B.ストウさんが話しかけてきます。自分らしくを応援するサイト「I thinkでいこう」より。矢嶋剛が著作・制作・運営をしています。

§11 知の巨人と意見を交わそう

文章の流れが読める。(§09)
難しい本も、すらすら。(§10)

そんなあなたは、ついに
本が語り掛けてくる境地へ到達。

以前はただの文字列だった文章が
あなたに感想や意見を求めるように
なりました。

この究極の読書感覚を
この§11で擬似体験してください。

この2冊の力を借ります

本があなたに語り掛けてくる。
あの感覚をお伝えするために
どの本を選ぶか。

ちょっと考えました。

語り掛けてくるるパワーで選ぶなら
絶対に泣ける本、

佐野洋子さん『100万回生きたねこ』
菊田まりこさん『いつでも会える』
手塚治虫さん『雨ふり小僧』。


が最適です。

でも見送らせていただきました。
理由は対話にあります。

今回、お伝えしたい読書感覚には、
本に語り掛けられた後の対話が
含まれています。

本とあなたの対話です。
あなたも本に答えを返すのです。

「えっ、なにそれ、怖い」
「夢見るファンタジー系?」
なんて言わないでください。

究極の読書では
きわめてふつうの反応ですから。

さて、その対話ですが…
泣ける本だと意識しづらいのです。
読むと、泣いて泣いて、
胸がかき乱され、パニック!
状態になってしまい、

「本よ、わたしはね…」と返す心の
余裕が無くなってしまいます。

ですから今回は…
あなたが冷静に読めて、返事が
できるような本を選びました。

それが以下の2冊。

アダム・スミスさんの『国富論』、
ハリエット・ビーチャー・ストウ
さん(ストウ夫人)の『アンクル・
トムズ・ケビン』(アンクルトムの
小屋)
。この2冊の力を借ります。

対話のテーマは奴隷制です。
どちらの本も奴隷制について
書いています。

本を介した著者二人の語り掛けを
疑似体験してください。

ということで、さっそくですが、
経済学の父、アダム・スミスさんと
奴隷制について意見を交換!

本人は遥か昔に物故されていますが
(1790年没)、彼の『国富論』
(初版1776年)を読んで議論しちゃ
いましょう。

さっそく、氏を召喚します。

アダム・スミスさん 降臨!
会うなり こう言います

 奴隷によってなしとげられる
 仕事は、たとえかれらの生活
 維持の費用しかかからぬよう
 にみえても、けっきょくのと
 ころいちばん高価。

 古代イタリーにおいて、その
 経営が奴隷の手にゆだねられ
 るようになってから、穀物の
 耕作がどれだけ退廃し、また
 主人にとってどれほど不利な
 ものになったか。


(大内兵衛他訳『諸国民の
 富Ⅰ』=国富論 より引用)


そして、あなたに尋ねます。
「どうお考えですか?」

この対話が

本を読む快感、読書の楽しさです。

すでに亡くなった人の本を
読むときは、とくに。

たとえば、
今、取り上げた奴隷制の話。
スミスさんはローマ帝国の奴隷制に
触れますが(=古代イタリーの下り)
その思いの先にはイギリスの植民地
アメリカで盛んな奴隷制に対する
怒りがあるのです。
(アメリカの奴隷解放宣言はアメリカが
 イギリスから独立した後の1862年の
 出来事です。スミスさんの死後の話)


そして、自分の思いを本を介して
読者に伝えようとしたのです。

こうした語り掛けを、わたしたちは
本を通じて知ることができます。
読書をきっかけに、自分の意見を
持つこともできます。

続いて ストウさん 降臨です

今度は、ハリエット・ビーチャー・
ストウさんと意見交換しましょう。

彼女は小説『アンクル・トムズ・ケ
ビン』(1851-52年発表)を執筆。

この小説は奴隷社会の実態を克明に
描いています。奴隷たちの、いくつ
ものストーリーが折り重なるように
展開します。

そんな作品を書いた彼女を召喚!
今日はいろいろ忙しい。

ストウさん 語り掛けます

「小説、読んでくれました?」
「たとえば、この箇所。ある青年
 奴隷の言葉を読みますね」
と朗読してくれます。

奴隷というものは結婚できないのを
知らないのかい?  この国には、
まだそのための法律がないんだよ。
もしあいつがぼくたちの仲を裂こう
と思えば、ぼくにはきみを妻として
引き止めておくことはできないんだ


(山屋三郎他訳『アンクル・トムズ・
 ケビン 上巻』より)


朗読が終わると、彼女、尋ねます。
「あなたは、どう思われますか?」

この投げ掛けに、あなたが答えると
したら…。

彼らの話、つまり過去の話に対して
ではなくて、今、世界で起きている
問題を踏まえて答える
としたら…。

昔の本=過去 を超えて

ご覧になりましたか?
2013年に封切られた映画
 『それでも夜は明ける』
 (原題: 12 Years a Slave )

この映画でアカデミー賞助演女優
賞を受賞したルピタ・モンディ・
ニョンゴさん
は、受賞スピーチで
世界の子供たちへ、こう語り掛け
ました。

"No matter where you're from,
 your dreams are valid."

(あなたがどこの出身であれ、
 夢は叶います)

彼女の、このスピーチは
広く知られています。
なぜでしょう?

彼女そして作品の素晴らしさは
もちろんですが、社会の関心も
強くアシストしたように感じます。

今も人身売買が行われていること、
ご存知ですか?

Human Trafficking という言葉を
聞いた事、ありませんか?

アダム・スミスさんが嘆いた問題は
3世紀を経た現在でも無くなっては
いません。彼に向かって「人類は、
それほど愚かでなくなりました」と
未だに告げることができません。

ハリエット・ビーチャー・ストウ
さんに対しても…。

どうしましょう?

その辺りも、読書を通じて
意見を交わしてみては?

最後に 知の巨人という表現について

今回、§のタイトルに「知の巨人」
という表現を用いました。

知…とか、巨人…とか、
近寄りがたい感じがしますよね。

経済学の父、なんて最悪ですよね。
その人がどんなに良いこと、共感
できることを書いていても
「経済?」「学の父?」と聞いた
瞬間、サ・ヨ・ナ・ラ。

みんな、そうなります。

「知の巨人」も同じだと思います。
そう呼ばれていると聞いただけで
遠ざけられてしまう。

でも、そうしたイメージだけで
その人を避けるって、なんか、
もったいない気がします。

とくに、難しい本すらすらな
あなたには。

あなたなら
「…学の父」や「知の巨人」と
本を介し対話ができます。

そして本を抜け出し、新しい地平を
眺められます。(cf.現在の奴隷 )

ですから
避けないでほしいのです。

「知の巨人」たちと対話や議論
「できるよ~」になって
「おもしろいよ〜」を周囲に
伝えてほしいのです。

ですから今回、
「怖くないもん」的なニュアンスを
込めて、「知の巨人」という表現を
使わせていただきました。

意見交換という堅苦しい言葉を使っ
たのもまったく同じ理由です。


それにしても…

スミスさん、正義の人でした。
怒ってました。情熱の人でした。

ストウさん、問題のとらえ方が見事
でした。あの一節 を読むだけで
奴隷制がわかるんですから。

予備知識がなくても…、誰でも
というところが本当に凄いです。


名を遺す人はやっぱり、それなり。
そう感じます。

ですから著書を読むだけで対話が
成立するのでしょうね。

知の巨人ほど読みやすい本を
遺している。とも言えそう?

確認は、あなたの目と心で。

知の巨人たち(=凄い人たち)と
本を介して盛り上がってください。

(おしまい)

   
どちらもスゴイ本です。『国富論』を読めばアダム・スミスさん(左の方)が、『アンクル・トムの小屋』(右の本)を読めばハリエット・B.ストウさんが話しかけてきます。自分らしくを応援するサイト「I thinkでいこう」より。矢嶋剛が著作・制作・運営をしています。
有名とか受賞とか関係ありません。
すごい本は語り掛けてくるんです。
「わたし、こう思ったんだけど…」
(左の人がアダム・スミスさん)

追伸

知の巨人たちと意見交換。いかかがでした?
アダム・スミスも怖くない! なんてね。
旧い作品は今に通ず。そのあたりも楽しんで
いただけたら嬉しいな。さて、この§11で
「読む」の話はお仕舞いです。もうあなたは
「書く」「読む」が自在になっているはず。
ですから次へ。自分らしさを存分に発揮する
ための一助、アイデアの磨き方に話を進めま
す。あなたのアイデアをNo.1にするコツを
わかりやすく説明します。

  

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