どちらもスゴイ本です。『国富論』を読めばアダム・スミスさん(左の方)が、『アンクル・トムの小屋』(右の本)を読めばハリエット・B.ストウさんが話しかけてきます。 |矢嶋ストーリー作品『I thinkでいこう』より。文と写真は矢嶋剛。

§11 知の巨人と意見を交わそう

ということで、さっそくですが、
経済学の父、アダム・スミスさんと
奴隷制について意見を交換!

もちろん、本人は遥か昔に物故され
ている(1790年没)ので、直接、
言葉を交わすことはできません。
しかし、彼が遺した 『国富論』
(初版1776年)を読んで、
彼と議論する事はできます。

さっそく、氏を召喚しましょう。

会うなり、スミスさん、こう言います

 奴隷によってなしとげられる
 仕事は、たとえかれらの生活
 維持の費用しかかからぬよう
 にみえても、けっきょくのと
 ころいちばん高価。

 古代イタリーにおいて、その
 経営が奴隷の手にゆだねられ
 るようになってから、穀物の
 耕作がどれだけ退廃し、また
 主人にとってどれほど不利な
 ものになったか。


(ともに、大内兵衛他訳『諸国民の
 富Ⅰ』=国富論 より引用)


そして、あなたに尋ねます。
「どうお考えですか?」

この対話が

本を読む快感、読書の楽しさだと
わたしは想っています。

すでに亡くなった人の本を
読むときは、とくに。

たとえば、
今、取り上げた奴隷制の話。
スミスさんはローマ帝国の奴隷制に
触れますが(=古代イタリーの下り)
その思いの先にはイギリスの植民地
アメリカで盛んな奴隷制に対する
怒りがあるのです。
(アメリカの奴隷解放宣言は独立後の
 1862年の出来事。)


こうした語り掛けを、わたしたちは
本を通じて知ることができます。
読書をきっかけに、自分の意見を
抱くこともできます。

そんな意見交換。
奴隷制の話が出たので、今度は、
ハリエット・ビーチャー・ストウさ
んと意見を交換しましょう。彼女は
小説『アンクル・トムの小屋』
(1851-52年発表)を書きました。

では、さっそく召喚!
今日はいろいろ忙しい。

ストウさん 語り掛けます

「小説、読んでくれました?」と
言いながら「たとえば、この箇所、
ある青年奴隷の言葉を読みますね」
と朗読してくれます。

奴隷というものは結婚できないのを
知らないのかい?  この国には、
まだそのための法律がないんだよ。
もしあいつがぼくたちの仲を裂こう
と思えば、ぼくにはきみを妻として
引き止めておくことはできないんだ


(山屋三郎他訳『アンクル・トムズ・
 ケビン 上巻』より)


朗読が終わると、彼女、尋ねます。
「あなたは、どう思われますか?」

この投げ掛けに、あなたが答えると
したら…。
彼らの話、つまり過去の話に対して
ではなくて、今、世界で起きている
問題を踏まえて答える
としたら…。

昔の本=過去 を超えて

ご覧になりましたか?
2013年に封切られた映画
 『それでも夜は明ける』
 (原題: 12 Years a Slave )

この映画でアカデミー賞助演女優
賞を受賞したルピタ・モンディ・
ニョンゴさんは、受賞スピーチで
世界の子供たちへ、こう語り掛け
ました。

"No matter where you're from,
 your dreams are valid."
(あなたがどこの出身であれ、
 夢は叶います)

彼女の、このスピーチは
広く知られています。
なぜでしょう?

彼女そして作品の素晴らしさは
もちろんですが、社会の関心も
強くアシストしたように感じます。

今も人身売買が行われていること、
ご存知ですか?

Human Trafficking という言葉を
聞いた事、ありませんか?

アダム・スミスさんが嘆いた問題は
3世紀を経た現在でも無くなっては
いません。彼に向かって「人類は、
それほど愚かでなくなりました」と
未だに告げることができません。

ハリエット・ビーチャー・ストウ
さんに対しても…。

どうしましょう?

その辺りも、読書を通じて
意見を交わしてみては?

最後に、知の巨人さんについて。

知…とか、巨人…とか、
近寄りがたい感じがしますが、
名を遺す人はやっぱり、それなり。

問題の核心をわかりすく伝えます。
先ほどのストウさんの、あの一節を
読むだけで、奴隷制がわかります。

予備知識がなくても…、誰でも
というところが本当に凄い。

ですから著書を読むだけで、
会話が成立するんです。

知の巨人ほど、読みやすい本を
遺している。
わたしは、そう感じています。

そんな巨人たちと、
盛り上がってください。

   
どちらもスゴイ本です。『国富論』を読めばアダム・スミスさん(左の方)が、『アンクル・トムの小屋』(右の本)を読めばハリエット・B.ストウさんが話しかけてきます。 |矢嶋ストーリー作品『I thinkでいこう』より。文と写真は矢嶋剛。
有名とか立派とか関係ありません。
スゴイ本は語り掛けてくるんです。
「わたし、こう思ったんだけど…」
(左の人が、アダム・スミスさんです)

巨人さん いらっしゃーい!